生活保護法の改悪に反対する研究者の共同声明

先の国会で廃案となった生活保護法改正案が今国会に提出された。この法案は、不正受給を防ぐためと称し、第1に、生活保護申請時に所定の申請書と資産・収入・扶養の状況などに関する書類の提出を義務づけると共に、第2に、親族の扶養義務を生活保護の事実上の前提要件としている。 これは自由で民主的な社会の基盤であるセーフティーネットとしての生活保護を脅かすものであって、私たちはけっして許すことはできない。
 第1の問題点については、悪名高い「水際作戦」による門前払いを合法化するものだとの指摘を受けて、先の国会では「特別の事情があるときはこの限りではない」と修正された。しかし、「特別の事情」を判断するのはこれまで「水際作戦」を進めてきたような行政の窓口である。政府は「運用はこれまで通り」「申請の意思があれば受理しなければならない」とし、「門前払いにならないように各自治体に通知する」と言っている。だが、「特別の事情があるときはこの限りではない」と認めたとしても、書類提出が原則となれば、申請にたいする門前払いが横行するのは目に見えている。
 「運用はこれまで通り」であるならば、口頭申請も可能であることが法文に明記されるべきである。そもそも、このようは書類の提出は申請の後で済むことであり、裁判判例も申請は口頭でよいことを認めている。ギリギリの生活を迫られている人たちには、保護申請すること自体を簡素化し容易にすることこそが切実に求められる。これはまた、第50会期国連社会権規約委員会も我が国に対して勧告していることである。
 第2の問題点については、まったく修正されていない。親族への通知を義務付ける条文や、親族の収入や資産の状況の報告を親族本人はもとより金融機関や雇い主などにも求めるという条文が新設されている。親族関係は多様である。夫への通知・調査を怖れるDV被害者だけでなく、親族に「迷惑がかかる」ことから申請をためらう人は現在でも少なくない。法改正によって、一層多くの人が親族に迷惑をかけたくないという理由から生活保護の利用を断念することになる。親族に「共助」を厳しく求めることは国の責任転嫁に他ならない。

 この他にも、法案は、ジェネリック医薬品の使用義務づけ、保護受給者の生活上の責務、保護金品からの不正受給徴収金の徴収を定めている。保護受給と引き換えに生活困窮者にこのような責務を課すことは、性悪説に立って保護受給者を貶め、その尊厳を著しく傷つけるものである。
 以上、この改正案は全体として生活保護を権利ではなく「恩恵」「施し」として生活困窮者とその親族に恥と屈辱感を与え、劣等者の烙印を押し、社会的に分断排除するものといわねばならない。
 生活困窮者は少数であり、常に声を上げにくい当事者である。しかし、セーフティーネットは、現に生活に困窮している人々を救うためだけの制度ではない。それは自由な社会のなかで生きる人々が、様々なリスクを抱えつつも、幸福な暮らしを安心して追求していくことができるための必須の条件である。セーフティーネットを切り縮めることは、自由で民主的な社会の基盤を掘り崩すものといわざるを得ない。これは生活困窮者だけの問題ではなく総ての人々の生存権に対する深刻な攻撃である。
 このような問題点をもつ生活保護法改正に私たちは強く反対するものである。
以上、声明する。
声明へ賛同される研究者の方は、お名前と共に、所属・専門などご自身をidentifyする事項を添えて、以下にご連絡下さい:

Eメール sos25.2013@gmail.com

ファックス 03-5842-6460


2013年10月25日金曜日

10.25.「東京新聞」・「毎日新聞」・「しんぶん赤旗」が紹介


25日付「東京新聞」と「毎日新聞」で報道されました:

生活保護法改正案に反対 研究者1000人超 声明賛同


 生活保護費の抑制策を盛り込んだ生活保護法改正案に反対する学者など研究者による共同声明の賛同者が千人を超えた。呼び掛け人代表の三輪隆埼玉大名誉教授、後藤道夫都留(つる)文科大名誉教授、布川日佐史(ひさし)法政大教授が二十四日、厚生労働省で記者会見して明らかにした上で「日本の社会に貧困が広がり、深刻な状況になっている」と訴えた。
 賛同者は千八十七人。呼び掛け人が改正案の国会提出に反対する声明案を発表した九月十三日には四百四十人だった。その後、政府が今国会に改正案を提出し、成立させる方針を明確にしたのを受けて急増した。内訳は社会保障・福祉分野が二百二十五人、教育学百五十二人、憲法・行政法などが百三十八人など。幅広い分野の研究者が賛同した。
 声明は改正案について「安全網を切り縮めることは、自由で民主的な社会の基盤を掘り崩す。生活困窮者だけでなく全ての人々の生存権に対する攻撃だ」と批判している。
 申請時に資産や収入に関する書類の提出を義務付けた規定に関し「申請への門前払いが横行するのは目に見えている」と指摘。親族らの扶養義務強化に対し「一層多くの人が迷惑をかけたくないとの理由から生活保護の利用を断念する」と懸念を示している。
 政府は五月、改正案を国会に提出。与党や民主党による修正を経て衆院を通過したが、参院選前の与野党対立のあおりで廃案になった。政府は修正を踏まえ、今国会に再提出した。 (上坂修子)

◆呼び掛け人(五十音順)

 浅倉むつ子早稲田大教授(労働法・ジェンダー法)、伊藤周平鹿児島大教授(社会保障法)、井上英夫金沢大名誉教授(社会保障法)、遠藤公嗣明治大教授(社会政策学)、大門正克横浜国立大教授(歴史学)、小沢隆一東京慈恵会医科大教授(憲法学)、木下秀雄大阪市立大教授(社会保障法)、木本喜美子一橋大教授(社会政策学・ジェンダー研究)、後藤道夫都留文科大名誉教授(社会哲学・現代社会論)、竹信三恵子和光大教授(労働社会学)、布川日佐史法政大教授(公的扶助論)、本田由紀東京大教授(教育社会学)、三輪隆埼玉大名誉教授(憲法学)、世取山洋介新潟大准教授(教育学)、和田肇名古屋大教授(労働法)


生保法改正案:研究者ら1087人、反対声明に賛同

毎日新聞 2013年10月25日 13時41分
 政府が秋の臨時国会に提出した生活保護法改正案に反対する大学教員らのグループは24日、「改正案は自由で民主的な社会の基盤を掘り崩す」とする反対声明に賛同した学者・研究者が、1カ月余で1087人に上ったと発表した。
 法案は生活保護の申請時に本人の資産や収入、親族の扶養状況について書類の提出を原則として求めるなど、申請手続きを厳格化し親族の扶養義務を強調した内容。通常国会では廃案になった。
 これに対し、グループは「全体として生活保護を権利でなく『施し』として困窮者とその親族に屈辱感を与え、社会的に分断排除する」などとする声明文を作成。9月から賛同者を募っていた。
 24日に記者会見した三輪隆・埼玉大名誉教授らによると、賛同した研究者の内訳は▽社会保障・福祉分野225人▽教育学152人▽憲法、行政法など138人−−など。三輪氏は「専門領域で貧困問題に直面したり、周囲の学生が以前と比べて金銭面で困っている様子に気づいた研究者が賛同したのでは」と話した。【遠藤拓】
また、『しんぶん赤旗』も

生活保護法改悪廃案に

研究者会見 共同声明1087人賛同

 先の国会で廃案となった生活保護法改悪法案を安倍政権が今臨時国会に再提出した中、社会保障法などの分野で活躍する研究者は24日、東京都内で会見を開き、同法案に反対する研究者の共同声明への賛同者が目標の1000人を超えたことを公表しました。
 会見に臨んだのは、呼びかけ人代表の都留文科大学の後藤道夫名誉教授(社会哲学・現代社会論)、法政大学の布川日佐史教授(公的扶助論)、埼玉大学の三輪隆名誉教授(憲法学)の3氏です。
 9月中旬から呼びかけて、声明賛同者は、1087人に上りました。
 声明は同法案について「全体として生活保護を権利ではなく『恩恵』『施し』として生活困窮者とその親族に恥と屈辱感を与え、劣等者の烙印(らくいん)を押し、社会的に分断排除するものといわねばならない」と指摘。廃案に追い込む決意を述べています。
 後藤氏は「学生の中に貧困が相当広がっていることを実感し、貧困・社会保障問題を専門としない領域の研究者へも賛同が広がった」と述べました。
 三輪氏は「それぞれの研究分野で貧困問題にぶつかることがあり、共感が広がったのだろう」と話しました。
 布川氏は、同法案とセットで提出された生活困窮者自立支援法案について「モデル事業を見る限りでは、『中間的就労』として行われているものが労働基準法を適用しているとは言えず、就労の質の低さを懸念する。また、生活困窮者を経済的に支援する仕組みがない」と強調しました。




10.25.日弁連・自立支援法に関する意見書発表

日本弁護士連合会(日弁連)は、10月25日、生活困窮者自立支援法案について事実上の修正を求める意見書を発表しました。その趣旨は日弁連によると次のとおりです:


本年1月25日、社会保障審議会生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会の報告書(以下「報告書」という。)が公表され、その中で「新たな生活困窮者支援制度」が提案された。そして、この報告書に基づく新たな生活困窮者支援を制度化する生活困窮者自立支援法案(以下「法案」という。)が第185回国会(臨時会)に上程された。

法案は、生活困窮者に対する支援の仕組みとして従前不十分であった点を前進させる内容が盛り込まれており、方向性としては評価すべき点がある。しかし、生活困窮者が増大した原因の分析が不十分であり、さらに改善を図るべき点や懸念すべき問題点もある。

そこで、当連合会は、「新たな生活困窮者支援制度」が真に生活困窮者の支援策となることを期待し、先般国会に提出された生活困窮者自立支援法案について、意見書記載のとおり、意見を述べるものである。(以下に総論的な意見のみ掲載します。)

1 生活困窮者支援制度の運用を通じて生活困窮者を生み出す社会的背景を明らかにし、生活困窮者を生み出さないための制度づくりに反映させることを明記すべきである。

2 生活困窮者自立支援事業を利用することの権利性を明確にして、自己決定に基づく主体的な参加の下、全国どこでも等しく事業を利用できる体制を整え、不服申立制度を設けるべきである。

3 生活困窮者自立支援事業の対象者については、複合的な困難を抱えた人たちを広く対象に捉えるとともに、生活困窮者を積極的に見つけ出して相談支援窓口に誘導するべきである。

4 実施主体である自治体は、要保護状態の人たちに対しては、生活保護制度を活用すべきであり、生活困窮者支援制度の存在を理由として、生活保護の利用を拒否してはならないことを明記すべきである。また、自治体内部で消費生活部門や福祉・徴収等の他部門との連携体制を構築するべきである。

2013年10月24日木曜日

10.24.発表 共同声明


生活保護法の改悪に反対する研究者の共同声明

 先の国会で廃案となった生活保護法改正案が今国会に提出された。この法案は、不正受給を防ぐためと称し、第1に、生活保護申請時に所定の申請書と資産・収入・扶養の状況などに関する書類の提出を義務づけると共に、第2に、親族の扶養義務を生活保護の事実上の前提要件としている。  これは自由で民主的な社会の基盤であるセーフティーネットとしての生活保護を脅かすものであって、私たちはけっして許すことはできない。
 第1の問題点については、悪名高い「水際作戦」による門前払いを合法化するものだとの指摘を受けて、先の国会では「特別の事情があるときはこの限りではない」と修正された。しかし、「特別の事情」を判断するのはこれまで「水際作戦」を進めてきたような行政の窓口である。政府は「運用はこれまで通り」「申請の意思があれば受理しなければならない」とし、「門前払いにならないように各自治体に通知する」と言っている。だが、「特別の事情があるときはこの限りではない」と認めたとしても、書類提出が原則となれば、申請にたいする門前払いが横行するのは目に見えている。
 「運用はこれまで通り」であるならば、口頭申請も可能であることが法文に明記されるべきである。そもそも、このようは書類の提出は申請の後で済むことであり、裁判判例も申請は口頭でよいことを認めている。ギリギリの生活を迫られている人たちには、保護申請すること自体を簡素化し容易にすることこそが切実に求められる。これはまた、第50会期国連社会権規約委員会も我が国に対して勧告していることである。
 第2の問題点については、まったく修正されていない。親族への通知を義務付ける条文や、親族の収入や資産の状況の報告を親族本人はもとより金融機関や雇い主などにも求めるという条文が新設されている。親族関係は多様である。夫への通知・調査を怖れるDV被害者だけでなく、親族に「迷惑がかかる」ことから申請をためらう人は現在でも少なくない。法改正によって、一層多くの人が親族に迷惑をかけたくないという理由から生活保護の利用を断念することになる。親族に「共助」を厳しく求めることは国の責任転嫁に他ならない。

 この他にも、法案は、ジェネリック医薬品の使用義務づけ、保護受給者の生活上の責務、保護金品からの不正受給徴収金の徴収を定めている。保護受給と引き換えに生活困窮者にこのような責務を課すことは、性悪説に立って保護受給者を貶め、その尊厳を著しく傷つけるものである。
 以上、この改正案は全体として生活保護を権利ではなく「恩恵」「施し」として生活困窮者とその親族に恥と屈辱感を与え、劣等者の烙印を押し、社会的に分断排除するものといわねばならない。
 生活困窮者は少数であり、常に声を上げにくい当事者である。しかし、セーフティーネットは、現に生活に困窮している人々を救うためだけの制度ではない。それは自由な社会のなかで生きる人々が、様々なリスクを抱えつつも、幸福な暮らしを安心して追求していくことができるための必須の条件である。セーフティーネットを切り縮めることは、自由で民主的な社会の基盤を掘り崩すものといわざるを得ない。これは生活困窮者だけの問題ではなく総ての人々の生存権に対する深刻な攻撃である。
 このような問題点をもつ生活保護法改正に私たちは強く反対するものである。
以上、声明する。

第1回シンポジウム報告(1)構造改革の急進的再開と生活保護改革(後藤道夫報告レジュメ)

連続シンポジウム第1回「今なぜ、生活保護の大改悪なのか?」での後藤報告レジュメを再録します:


構造改革の急進的再開と生活保護改革

Ⅰ.生活保護制度と他の社会保障制度 ── 特殊な現状
── 高失業社会、高貧困社会で生活保護を大幅に縮小するのはなぜか ? ──

1.生活を「保障」しない日本の社会保障諸制度・賃金制度

a 生活保護による単身最低生活費をはるかに下回る最賃額 
b 老齢年金 生活保護基準以下が膨大
本人年金額50万円未満男8.2%女24.5% + 受給していない65歳以上が4.1% 
c 雇用保険 受給者は失業者の2割のみ。給付期間の基本は3ヶ月
給付上限額 7870 円(2012.8)。
d 傷病手当 従前賃金の 66 %。( 最低賃金・フルタイム就労による賃金額は、単身

生活保護基準費の 1.5 倍以上である必要)
e 児童手当 子ども一人分の基礎的養育費よりはるかに下

(例えば、生活扶助額の子ども一人分が必要)
f 医療 : 市町村国保「7割軽減」世帯(798万人)が払う膨大な金額
保険料 1196 億円(減免 13 億円)実質窓口負担推計 2300 億円(減免 計で 6.2 億円) *.7 割軽減の所得総額限度は年額 33 万円。一人働きの給与収入では 98 万円。

──→ 診療抑制
「過去 12 ヶ月間に具合が悪いところがあるのに、費用がかかるという理由で医
療機関に行かなかったことがある」:
回答者平均で 3 割。年収 300 万円未満かつ貯金等 300 万円未満では 4 割
(日本医療政策機構「日本の医療に関する世論調査」2008 年)
g.低所得世帯の過大な教育費支出
400 万円未満年収世帯の平均支出(文科省「子どもの教育費調査」2010)

子どもが小学生と中学生 学校教育費27万円 補助学習費23万円 〃 中学生と公立高校生 〃 39万円 〃 25万円 〃 中学生と私立高校生 〃 79万円 〃 26万円
───→ 唯一の最低生活「保障」制度 = 生活保護

2.唯一の「保障」たる生活保護利用の系統的抑制 ──→ 無保障貧困層の大群
生活保護の利用の系統的・強力に抑制

◆ 2007現在生活保護基準未満収入世帯705万世帯うち生保利用は108万世帯 15.3%
(厚労省社会・援護局保護課 2010.4) ──→ 生保利用世帯の5.5倍の無保障貧困世帯(低収入世帯)
       基準未満世帯数 うち生保利用世帯数 利用率  無保障倍率 
児童のいる世帯    166万   12万        7.4%     12.8倍 
高齢者単身世帯    150万   44万       29.5%     2.4倍
☆.2013.2現在 生保利用 157.5万世帯(215.5万人)
07 年と同割合で計算 866 万世帯(1185 万人)が無保障・生活保護基準未満収入

☆.膨大な無保障・基準未満収入層の存在 なぜ、ガマン?

◆ <生活保護利用者=特別な弱者> の浸透・普及
厳しい受給要件 +「特殊な困りものの弱者」というレッテルの意識的流布

──→ 大量の貧困者が「生保は自分とは無関係」と思い込み、ひたすらガマン ─→ 無保障・貧困層の大量存在は、小さな社会保障を支える影の大黒柱
生活保護バッシング ← 耐え続ける貧困者のガマンと不満 
   通常は「関係ない」棲み分けの意識
   マスコミにあおられて、ときどき爆発 へ

☆ 今回の生活保護バッシングの激しさ
棲み分け意識の動揺  無関係と割り切れなくなりつつある貧困・低所得層

「落ちこぼれる」ことへの無意識・無自覚な不安と恐怖の表れ

◆ 生活保護利用率の持続的上昇は何をもたらすか? 
☆.高失業社会と高貧困社会到来。反貧困運動の影響もあって受給者急増
世帯利用率 1996年度 1.4% → 2011年度 3.1% 
人員利用率            同 0.7% →           同 1.6%


イ.「特別な弱者」への「特別な保護」 → 当たり前の最低生活保障
私にも生活保護を!  社会保険料を払ってきたのだからもっと高い保障を! 
バッシングのエネルギーが「逆を向く」
ロ.「自己責任」「家族責任」を前提とした「小さな社会保障」の危機 
ハ. 社会保障給付の抜本的抑制は不可能
──→ <生活保護利用率の上昇を食い止め、切り下げる>

Ⅱ.「一体改革」と生活保護改革

1.<社会保障と税の一体改革>の推移

社会保障の機能強化のための消費税増税(福田政権、鳩山政権) 
→ 消費税増税の口実としての社会保障改革(菅政権)
 → 消費税の範囲内に社会保障を削減するための一体改革(野田政権)
  → 財界型「一体改革」<増税と社会保障削減の一体的推進>(安倍政権)

「一体改革」という用語は後景に
*.経団連 「社会保障制度等の一体的改革に向けて」2004 年 9 月 
概要説明
「《社会保障制度改革全体の方向性》
 ・最終的な目標は「自助努力を基礎とした社会の実現」。そのために、潜在
的国民負担率が将来にわたり 50 %となることを目指した改革を進める。
・社会保障・福祉制度に共通する基盤整備として、個人番号制を拡充・徹底 し、社会保障個人別の会計を導入する。それにより、適用・負担に関する 不公正の解消と、趣旨が重複した給付の排除による効率化を図る。」

2.安倍社会保障改革
── 安倍労働改革とともに、構造改革の急進的再開 ──

・ 三党合意
・ 社会保障改革推進法
・ 社会保障制度改革国民会議報告
・ 社会保障改革プログラム法案骨子(閣議決定)


<特徴>
①「自助の優先」を社会保障構想として強く打ち出す。端的な削減の哲学
② 社会保険を「自助の共同化」として公的性格の縮小を大方針に。 保険給付抑制 + 「混合」化 + サービス供給事業の営利化
③ 児童手当、公立高校授業料給付を所得制限付きに + 施設介護補足給付費の資 産調査補助費 (社会手当等の普遍主義の削減 + 各種低所得者支援の生保化)
④ 社会保障給付全体の抜本的抑制を可能とする前提条件 ── 生活保護大幅縮小
⑤ サービス事業の営利化で新たな市場(規制弱 → ブラックビジネス化の可能性) 保育、介護、低所得者向け住宅供給、就労支援、人材ビジネス
☆.銀行資本、投機資本の新たな投資先? 「ヘルスケアリートも検討」

<福祉国家型所得再分配・経済安定路線の自覚的拒否 ── 「世界で一番企業が活動しやすい国」。 民主党政権の部分的福祉国家志向との決別>

1.「大企業をまず」イデオロギー
1)<大企業の業績向上 → 国民生活は結果として向上>という政策枠組み・諸制度 構造改革以前は、実際に機能
2)構造改革は、1)の → を破壊するための巨大な社会改造
賃金の大幅減 + 解雇の自由 + 企業行動の大きな変化(金融中心、短期的利

益、投資から投機へ) + 大企業群・高所得者減税 + 所得再配分装置の破壊
──→ 国内消費の低迷 → 国内需要の低迷 → 国内投資の低迷 → ゼロ成長
賃金下降・大企業内部留保の増加・ゼロ成長 十数年続く先進国は日本だけ。 ←── 所得分配装置(賃金 + 社会保障)における極端な資本優位
3)福祉国家型再生枠組み <賃金・社会保障を通じた所得再分配の強化 → 安 定成長と生活の安定> の未普及、支持過少

2.派遣自由化と「ホワイトカラーエグゼンプション」導入などの安倍労働改革 と 安倍社会保障改革は、「世界で一番企業が活躍しやすい国」路線の具体化

幅広く、社会保障諸領域・労働諸領域と連携して、生活保護改悪を止めさせる必要 

福祉国家型の社会再建・安定成長・生活安定の枠組みの本格的検討を



社会保障制度改革推進法にもとづく法制上の措置(改革プログラム法案)の内容
分野別
改革事項
法案の提出時期
実施時期
少子化対策
子どものための教育・保育給付及び子ども・子育て支援事業の実施
2015年度以降の次世代育成支援対策推進法 の延長の検討とその結果にもとづく必要な措置
保育緊急確保事業の実施
児童養護施設等における養育環境等の整備
医 療 制 度
医 療 供 給 体 制
病床機能に関する情報を都道府県に報告する制度の創設
2014年通常国会
2017年度まで順次
地域医療ビジョンの策定 (必要な病床の適切な区分の設定、都道府県の役割の強化)
新たな財政支援制度の創設
医療法人間の合併、権利移転に関する制度等の見直し
地域における医師、看護職員等の確保及び勤務改善
医療職種の業務範囲及び業務の実施体制の見直し
医 療 保 険 制 度
国保の財政支援の強化
2015年通常国会
2014年度から2017 年度までに順次
国保の財政運営の都道府県化、市町村との役割分担
健康保険法等の一部改正する法律附則第2条の規定の措置 (協会けんぽへの財政支援)
国保及び後期高齢者医療制度の低所得者の保険料負担の軽減
被用者保険者に係る後期高齢者支援金を全て総報酬割 (組合健保・共済組合負担増、協会けんぽ軽減)
所得水準の高い国保組合の国庫補助の見直し
国保保険料の賦課限度額及び被用者保険の標準報酬月額の上限額引上げ
高額療養費の見直し(高所得者引上げ、低所得者引下げ)
外来・入院に関する給付の見直し (紹介状なしに大病院に受診時の定額負担金導入)
70歳~74歳の一部負担金の2割負担化⇒5か年かけて完全実施
2014年度予算措置で実施
後期高齢者医療制度のあり方
必要に応じて見直しに向け検討(実際上存続)
難病及び小児特定疾患の医療費助成の確立
2014年通常国会
2014年度メド
介 護 保 険 制 度
在宅医療及び在宅介護の連携の強化
2014年通常国会
2015年度メド
高齢者の生活支援及び介護予防に関する基盤整備
認知症に係る施策
要支援者への支援の見直し (介護保険給付対象から外し、市町村の地域支援事業へ切り替え)
一定の所得を有する利用者の負担を引上げ(1割⇒2割へ)
特養ホームの補足給付支給要件に資産を加える (低所得者でも一定の資産があれば対象から外す)
特養ホーム入所対象者の見直し(中重度者~要介護3~5に限定)
低所得者高齢者の保険料負担軽減
介護納付金の算定方法を被用者保険は総報酬割を導入
後期高齢者支援金の実施上踏まえ必要な措置
公 的 年 金 制 度
年金生活者支援給付金の支給、基礎年金の国庫負担割合2分の1への恒久的引上 げ、老齢基礎年金の受給資格期間の短縮、遺族基礎年金の支給対象の拡大
着実の実施
マクロ経済スライドにもとづく年金給付額の改定(支給額の減額)
必要に応じて見直し
短時間労働者に対する年金保険・医療保険の適応範囲を拡大
高齢期における職業生活の多様性に応じ、年金支給のあり方の検討 (年金支給開始年齢の引上げ)
高所得者の年金給付のあり方、公的年金等控除を含めた年金課税のあり方検討


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お礼とお願い


呼びかけ人代表より


共同声明への賛同者は23日16時に1千名を越え、今も次々に新しい方が加わってきています。ありがとうございました。

この共同声明の発表記者会見は24日午後に行ないます。発表に際して、この共同声明の文章が法案提出前の表現になっている点について、口頭で補足致します

記者会見で発表する賛同は、本日午前9時で締め切ります。しかし、法案はこれから国会で審議されます。今後も引き続き賛同を募り、声明の趣旨にもとづいて随時に厚生労働大臣、各党幹事長、委員会委員などに共同声明を届けることを検討しております。今日以降も、皆さまのお知り合い、ご同僚の研究者にこの共同声明を広め、声明への賛同を働きかけるようお願い致します
1)ご賛同の連絡に当たっては、
氏名、所属、研究上の専門>のをお知らせ下さい。

賛同者リストを五十音順で整理する都合上、読み方を間違えられやすい and/or 難しいお名前にはふりがなをつけて下さい。

連絡はできるだけEメールをお使い下さい。
ファックスによる際は、文字を16ポイント(約5ミリ)以上の大きさで明瞭に記して下さい。
なお、先にこのブログで示した「署名用紙」をお使いになる必要はありません。

2)既に、賛同をお寄せ下さった方は、このブログに掲載された最新の賛同者リストのご自分についての記載を点検し、不適切な記載がある場合は、事務局までご連絡下さい。

連絡先:

Eメール:sos25.2013@gmail.com
または、ファックス:03-5842-6460
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 補足説明

☆ はじめの文
 
政府は、先の国会で廃案となった生活保護法改正案を秋の国会に提出しようとしている。 
   →  先の国会で廃案となった生活保護法改正案
が今国会に再提出された。

☆ おわりの文
  このような問題点をもつ法案が、再提出されることに私たちは強く反対するものである。 
   →  このような問題点をもつ生活保護法改正案に私たちは強く反対するものである。