先の人気お笑いタレントの例では、扶養義務者による扶養が生活保護適用の前提条件であり、タレントの母親が生活保護を受けていたことが不正受給であるかのような論評が見られます。しかし、現行生活保護法上,扶養は保護の要件(前提条件)ではありません。息子であるタレントの対応に対する道義的評価はともかく,現行生活保護法では、母親が不正受給をしていたということにはなりません。
① 民法上の扶養義務
② 扶養義務者による扶養は保護の前提条件ではない
詳しくは、生活保護問題対策全国会議編『間違いだらけの生活保護バッシング ―Q&Aでわかる 生活保護の誤解と利用者の実像 』明石書店、2012年、をご覧ください。
① 民法上の扶養義務
確かに、民法上、夫婦と「直系血族及び兄弟姉妹」は、互いに扶養をする義務があります。しかし、求められる扶養には程度の差があります。夫婦と未成熟の子に対する親の義務は、「文化的な最低限度の生活水準を維持した上で余力があれば自身と同程度の生活を保障する」という強い義務です。しかし、兄弟姉妹同士,成人した子の老親に対する義務(今回のタレントの事例),親の成人した子に対する義務は,「その者の社会的地位にふさわしい生活を成り立たせたうえでなお余裕があれば援助する」という弱い義務にとどまります。
② 扶養義務者による扶養は保護の前提条件ではない
生活保護法4条2項は、「扶養義務者の扶養は保護に優先して行われるものとする」と定めています。これは、保護受給者に対して実際に扶養義務が果たされているかどうかが問題とされ、扶養援助(仕送り等)が行われた場合は収入認定して、その援助の金額の分だけ保護費を減額するという意味です。扶養義務者がいれば生活保護は受けられないということではありません。
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